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雀坂

踏切をわたって
赤いポストが立っている
そこでぽくは立ちどまる

ぽくは けさもここまで
何人かの人たちと
すれちがってきたが
追いこしていくバイクのほこりに
顔をそむけて
右に左に
「きみ 苦しくないか」と
呼びかけ
話しかける人をもたなかった

ぼくはふりかえる
ポストの口に手を入れる
人ごみにまじって
べん当箱一つ
坂を上りはじめる
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