もくじ>詩>岩本敏男詩集>一九五四年作品>人と人
人と人
わかりあわねばならない
わかろうとして
たがいに
その口のなかをのぞこうとしたが
《もし 彼にのみこまれてしまっては》
歯が かたくくいとめてしまった
だが
みつめあい そらす 目のなかに
ちいさく一人で うなだれているものがみえるのだ。
《あれは私ではない》
目をつむって首をふった
たがいの虫歯が痛み出した
おもわず口をあけて
また つぐんだ
歯の痛み
かわいた口をおさえて
たがいに
とどめの
牙のような言葉をさがした
額の汗を
まるくなではじめた