もくじ>詩>岩本敏男詩集>一九五二年作品>おにがわらのちち、とゆのはは
おにがわらのちち、とゆのはは
おまえ またかあちやんに銭せびって え 羊みたよに紙ばっか食いよって だれになにを書きよんにゃ 女へかい へ おまえに女ができるわけはなし おおかた机にもたれこんで くそたれがおしとるんが インテリちゅうもんやろかい
ええか おりゃな なにもおまえが詩いとか歌とかしよるのじやまはせんぞ おれがきしょくわるうしとんのは おまえも大工手伝いの貧乏たれのせがれなら ちっとはおれにもわかるものがでけんかちゅうん とうちゃんきいてくれというて おう よっしゃええぞ えらいやつやと おれがうなるものになっては そいではおまえの後生がわるいかちゅうん
おにがわらのちち とゆのはは とはありゃなにや え おれが屋根のおにがわらで かあちゃんはとゆやというのんかい おれだてひらがなぐらいよめよる ゆうべ夜なかにしょんべんするときみたわ おまえもえらいおやにけつまくったもんやな へ おにがわらのてておや とゆのははおやで そいでなんぼになるのんや なんぼになるんちゅうのは 銭のことやぞ
おれはな こいで六十六にはなりよるが 雨さえ降らねば いちにち二百四十円の仕事をしよるわ へじゃ おまえ 土方殺すにゃ刃物はいらぬちゅう歌しっとるかい こうして 朝からじゃがいも食うて たらいで雨うけて あしたはどうなるんやいと さるまたひとつでよちよちおもいよるが やっばりおれにしたとてつらいわな
おこっとるんかおまえ おこったれ おこったほうが男らしゅうみえてええ 学校へいって 肺病やみになって くりごとぎょうさんにならべて こえたごにももってけんよな本にしよって おまえもおれも おおきにうかばれんちゅうこっちゃ な おれはとしとって わからんことがおおなったて けいさつじゃい学生じゃい らむねのびんやなみだのでるガスや つまらん暮しをしとるもんばっか血相かえてつのつきあわして どこの世界 てまえらどうしけんかしよるとこがあんのかい な そいでおまえは 目もなし耳もなしくちもなしと ふん
おまえ ここへきていも食うとけよ かあちゃんが反物をもろうてきょったら 夜どうし電気とぼして 糸まいたりほぐしたりせんなんやろが そいからきばって おにがわらのちち とゆのはは なんぼでも紙食うがええわ え おい きこえんのか こんにどしゃ降りでは いうてとどきもせんかいの 家もながれてみいんなくさってしまうわいの