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>詩>
岩本敏男詩集
>一九五二年作品>黒い糸
黒い糸
家の六畳と三畳に
きょうも黒い布をしきつめて
母は糸のもつれをほぐした。
おれは窓ぎわにいて
かたいパンをかじっては
糸車のハンドルをまわした。
裏の日向に
ひっくりかえった万年青
(おもと)
の鉢。
両腕をとられて
物千にぶらさがる菜っ葉服。
(耳のとおい父は)
(清掃車を引いて)
(どこまでいっただろう)
低い屋根の下で
おれと母と
枠にからめていく
一本の黒い糸。
(痰にからんで)
(はげしく喉が鳴る)
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